さて、国際リニアコライダー(以下、ILC)計画の何が、どう問題なのか。

まずは、率直に疑問、不安に思うことを羅列してみます。


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1.環境への影響

◆長大な地下トンネル(地下100mの深さに、全長30㎞~50㎞の直線トンネルを掘る)の建設、および、実験が環境へ与えるリスクは?
 ・地下水脈、地質構造の変化
 ・生態系への影響
 ・周辺地域の農業・林業への影響

 *脊振山系とは脊振山を中心に、基山、牛頸山、井原山、雷山、浮岳、十坊山、等・・・こう聞くと、実に身近な山々がその建設予定地に含まれることがわかる。
   脊振山系の恩恵を受けるのは、福岡市(特に早良区、南区、西区)、糸島市、久留米市、筑紫野市、唐津市、佐賀市などなど・・・広域に及ぶ。
 

◆地震大国である日本に建設すること自体、そもそもリスクが高いのでは?

◆世界最大の衝突型円形加速器を使用した実験に対する危惧として、マイクロブラックホール(理論上)が形成されうる可能性が指摘されているが、大丈夫なのか?
(*フランス高等裁判所及び欧州裁判所に、実験中止を求める訴訟も起こされている)

◆実験に使用する加速器は放射線を発生するという。地下水、周辺への影響は?
  実験によって生まれる放射性廃棄物の処理は?
 <参考>
  http://legacy.kek.jp/ja/activity/arl/houshasen.html
  


2.電力の問題

 ILC建設地選定条件の一つはを「電力の安定供給」。
 ILC運用には、23万kW~30万kWが必要だということ。
 すべての原発が停止した状態の去年3月末現在の九電の配給力は、おおよそ2344万kW。
 つまり、ILCという一つの施設だけで、九電の配給力の1%を消費する計算になる。
 建設誘致を進める専門家は、「夏場の電力ピーク時にはメンテナンスに充てる」と説明しているものの、そもそも、市民や企業に節電!節電!と要請している現在の電力事情にそぐわないのではないか?
 もし、現在の電力供給量で、こんな大量の電力配給が可能なら、これまで、散々繰り返されてきた
 「電力逼迫!」の報道&節電要請は、いったいなんだったんだろう…。

 ・・・<参考>・・・
 RKBニュース(6月8日)のILC特集で、ILCアジアー九州推進会議の松尾新吾代表(九電元会長!)のコメント

 「今、たまたま、ご存知のような状況で非常に苦労していますけど、正常な状態に戻れば、電力のインフラについては自信を持って申し上げますが、ここ以上に安定した地域は、まずないだろうというふうに思います。だから、もし、電力が十分要るとなれば、それこそ一生懸命。電力インフラ(が原因)で、来れないなんていったら、私の恥ですから。絶対にそういうことはないと

 ・・・・・・・・・

 この松尾代表のいう「正常な状態に戻れば」というのは、「原発が再稼働すれば」ということに他ならない。
 つまり、ILC誘致は、原発再稼働への大義名分?

 

3.使用済み核燃料・最終処分場への転用?

  ILCの建設が決まった場合、建設に7年、実験期間として20~30年という設計。
  では、その実験期間が終わったあと、この施設はどうなる?
  県の窓口(ILC推進プロジェクトチーム)に問い合わせたところ、「それは未定」なのだそうだ。

  一方、加速器研究は、「放射性廃棄物処理の研究」へも発展する。
  現在のILCの研究目的は「宇宙の謎を解く」ことであっても、世界最大級の加速器を使用するILCが、後々、「放射性廃棄物の研究」にも波及する可能性はゼロではない。
  実際に、もう一つの候補地、岩手では、ILC誘致の基本計画の参考資料の中に「放射性廃棄物処理研究」と明記されているそうである。
http://homepage3.nifty.com/gatayann/120602ILChandout.pdf
  

  地下100mの強固な岩盤に50㎞のトンネル。光速の実験を行っても大丈夫というお墨付き。
  加速器からは放射線をすでに発生しているし、この加速器研究が放射性廃棄物処理研究へと発展する可能性もある。
  ・・・とくれば、実験期間終了後の施設(あるいは、そのさらに地下)が、使用済み核燃料の最終処分場に?    もちろん、単なる憶測にすぎないのだが、使用済み核燃料を国内で処分しなくてはならなくなったことや、いまだ、最終処分場はどこも決まっていないという現状から考えた場合、「ILC計画」の裏側で、もう一つの陰の計画が?・・・などと思わずにはいられない。

  行政の窓口にこの疑問を伝おえたところ「常識的に考えて、そんなことはないかと・・・」との返答。
 ところが、六ヶ所村の再処理計画でも、「むつ・小河原開発計画」による根扱ぎなど、「常識」を超える、実に巧妙で汚い手口を使ってきたのが、これまでの政府や原子力村であった。
  住民も自治体職員も、「国のやることだから…」と信じて疑わなかった。
  その結果、どうなったか・・・。  

  3.11以降、私は、「物事をナナメから見る力」をつけることの大切さを実感している。

 
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  ネイティブアメリカンの人たちは
  「7世代先のことを考えて物事を決める」のだそうだ。
  
  せめて、自分の子どもや孫でもいい。
  特に、こんな巨大事業の決定には、目先の経済効果や社会効果だけでなく、
  「この決断は、子どもや孫に誇れるものであるかどうか?」という視点で判断してほしい。
  

  いくら、経済効果があろうとも、世界的「知」が結集しようとも、宇宙の謎が解けたとしても、
  お金はいつかなくなる。
  研究者はいつしか去っていく。
  けれど、自然は戻らない。
  水が枯れ、山が放射線で汚染された時、だれが責任を取るというのだろう?

  最後のしわ寄せは、いつも住民である。

  
  どうか、行政任せではなく、他人事でもなく、私と未来につながる大切なことだと認識してほしい。
  
  ILCは、7世代先の子どもたちに誇れるものなのだろうか?・・・自分のこととして、考えてほしい。

  この糸島に、福岡に、佐賀に、九州に、
「自覚ある大人」が増えていくことを心から願います。